堀内正和 アトリエのない彫刻家

2006年1月9日(月)〜3月12日(日)

 

休館日: 毎週月曜日(1月9日を除く)
開館時間: 10:30-17:30
入館料: 一般600円/小中学生200円/視覚障害者及び付添者300円


堀内正和は、彫刻をつくるとき、色彩や材質については一切排除して、形態のことだけしか考えない。彫刻の展示をする場合、彫刻にあたる光線の具合とか、どう設置するとか、どう見えるかは、問題にしない。彼にとって重要なことは、その形態がどう見えるかではなく、その形態がどうあるか、ということである。そのために彼に必要なのは、思考を集中させるメディタシオン(瞑想)による潜行の時間である。この彫刻家は、形を求めて造形思考するのである。

彼の言葉を借りれば、探求する形態を紙で立体(彼の言葉によれば《マケット》)に作り上げたときに、その造形思考を終了するのである。つまり、マケット(ペーパー・スカルプチュア)がきまると、メディタシオンの潜行の時間は去り、自分の芸術は終わると、明快に断言する。

そして、あとは完成したペーパー・スカルプチュアを野外や屋内に設置するために、ブロンズとかステンレススティールに移しさえすれば、彫刻は出来上がるというわけである。

ということは、彼にとっては、制作のために大きなアトリエは必要ではなく、両手で紙の彫刻をつくり出すための小さな書斎があれば十分だったのである。

この「アトリエのない」彫刻家は、紙と鋏と糊と針金とセロテープを使い、肉体的な労働はなく、座ったまま、脳内の営為だけで大きな宇宙を包含する小さなマケットを作るのである。

堀内正和の造形思考の産物であるこの紙の作品を独断的に推論すれば、彼が探究するのは、宇宙を支配する垂直と水平の原理と幾何学的な構成のなかに存在する調和を宿す純粋形態である。近代が問題にしたデカルト以来の主体と客体、あるいは私たちの周囲を取りまく情感的なものに呪縛される表現を排除し、宇宙を調和させている摂理に形態を与えようとし、ひたすら理性的に制作を続けた彫刻家なのである。

彼はこうも言っている。「…彫刻家の美しさは、ゆるぎない確かさの美であり、永遠に消滅せぬ不動の美である…」この言葉を読むと、宇宙の摂理と意思の現れとして五つの正多面体を理想的形態と考えた哲学者プラトンの思考にあたるような気がする。

この近代日本彫刻史に特異な位置を占める堀内正和の創造の秘密を、ペーパー・スカルプチュア83点によって読み取っていただきたいというのが、ギャラリーТОМの展示の企画である。

●関連企画●

酒井忠康氏レクチャー
2006年1月13日(金) 午後6時より ¥1,500(要予約)

●協力●

堀内淳子氏
神奈川県立近代美術館
アート・バイゼロックス


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